雪野

耳を澄まして読みたい

ああなんて、居心地がいいのだろう。
読み終わってまず思ったのはそれでした。作者様の書く文章が、とてもとても、居心地がいい。
そのまま座り込んで読みふけって立ち上がれなくなりそうです。

映画のワンシーンのような、丁寧に切り取られた時間がゆっくりと流れていく、そんなきれいな世界観。
独特の感性を持つ登場人物。
印象的な本のめくれる音、そして、飛行機の音。
何が欠けてもこの作品は成り立たない。すべてがぴたりとはまって、この世界をきっちりと演出しているのです。
逃避するのは、登場人物だけではなく私達読者でもあるでしょう。無粋な音のない、美しい静寂の世界へ逃避させてくれます。

そして、なんといっても水流くんと永峰さんのかけあいがおもしろい!
2人の不思議な暗算の掛け合いの、その理由を知ったとき、不器用で愛しい彼らにほっと胸が温かくなるでしょう。

眩しくて青い世界へ、是非一度旅立ってください。


──それでは。
いってらっしゃい、よい旅を!