「――と、幸せに暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし」
遠い昔に聞いたおとぎ話の締め括りは、
いつだって「めでたし、めでたし」だった。
当時子供だった私は、大人が読み聞かせてくれる物語のほとんどが「めでたしめでたし」で終わるから、
疑いもせず、そういうものなんだと無条件に信じていた。
でも、現実は違った。
私は、大切な大前提を見落としていた。
物語の冒頭は、いつだって、
「むかし、むかし、あるところに」
という台詞が書いてあったのに。
親切にも、
“これは今の話でも、あなたが住んでいる場所の話でもありません”
と注釈してあったのに。
私が暮らしているこの世の中は、
そんなに甘くなかった。
この世はいつだって戦いにあふれている。
この世の中は2つのタイプの人間で構成されているのだ。
勝者と敗者。
恋も就職も出世も敗れたら、
夢や希望は人魚姫のように海の泡になって消える。
戦いに敗れたものには、
屈辱にまみれた生活しか残されていない。
だから、みんな必死だ。
当然、私も必死だった。
なのに、敗れてしまった。
敗戦国の住人になってしまった。
“受験”という名の過酷な戦争で――…。
彼と彼女のラブアフェア