うのたろう
目が見えなくなった少女の話
初完結作品とのこと。
物語はひじょうにシンプルな構成になっている。
ある朝起きたら目が見えなくなってしまっていた主人公・愛海。
それは夢でもなければ、とつぜん治るといったものでもない、彼女の現実。
目の見えない彼女には、これから先も長い人生が続いていく。
目の見えなくなった愛海が自分の不幸を売りものにしようとしていないところがよかった。
心配してついてこようとする母親のたすけを借りず、白杖をついてひとりで散歩にでかけるシーンには、彼女の決意、そしてまぎれもない彼女の現実があるような気がする。
目の見えなくなった少女が願う夢は「恋をすること」。
単純だが、高二の少女がぎりぎりに願うものは、そういったたぐいのものかもしれない。
目の見えない愛海のまえにあらわれた修という少年が、これから一生暗闇の世界で生きる彼女の光になることを祈る。
ほんのわずかでも、希望を持てる作品だった。