だいぶ乱暴に扱われたせいで、身体中あこち痛い。
手枷もサイズがあっておらず、指が痺れている。
暗いからよく分からないけど、弟も多分まだ生きてる。けど動かないから、そっとしておこうと思う。
生臭いし、床が冷たい。
…
…
ここがどこなのかは分からないけど、なにをする場所かはさっき分かった。
人の売り買いをしてる場所だと思う。
人身売買というやつだ。
おれたち兄弟もきっと誰かに買われるのだろう。
…というのも一度は捨てられているわけだから、売られるのも同じようなものなのだ。
…
…
かたいくつの音が聞こえる
誰か来たようだ。
よく聞くとたくさんの、床をこする砂のような音も聞こえる。なにかの集団だろうか。
おれたち兄弟はこの人達に買われるのだろうか。
「この牢ですか?」
「はい。161と163はこの子供たちですが…いかがなさいます?」
162は誰だ?
「その寝ている子の額を見せていただけませんか?」
「はいわかりましたー」
このかたい靴の男、片手で弟を持ち上げるくらいだから、相当な怪力だろう。
「おお!!この額の傷跡は…!」
「間違いない!この子こそ勇者の血を継ぐ子供に違いない!!」
「勇者様!勇者様!」
え?
「お支払いはこちらで…」
おれは?
ちょっと待てそいつは勇者とかじゃない
おれの弟だ
離せ
連れて行くな
待てよ
その時大きな地鳴りが響き渡る。
「ひっ…こっ…こちらの子供を御所望でっ…??」
かたい靴の男が怯えている。
それよりおれの弟を…
…
…
…
臭い匂い。
先ほどの腐敗臭というよりは生乾きの匂いに近いのかもしれない。
どうやらおれは買われた。しかも弟とは別の相手のようだ。洗濯しないやつだろうか。
また弟と会うのはいつだろうか。会えないだろうか。
おれはこの人と上手くやっていくことが出来るだろうか。
…そんなこと考えても無駄かな。
…眠い…
…
…
…
「起きろ」
低く訛りの効いた声が聞こえる
直ぐに跳ね起きることが出来た。
今朝の目覚めはいい調子だ。
「お前は俺が買った…今日からうちの一族だ…」
ああ
おれは買われたんだったっけ。
「手枷を外してやれ」
「へい」
手枷を外されると、冷たい手先に血が流れ込む。途端に指が痺れてしまった。
「後ろだ…」
後ろを振り向いた。
???
なんだこれ
目の前には青味がかった汚い足
上を向くと巨大な顔。角らしきものが羊のように生えている。
巨人??
そばには比較的小さい、が、やはり青味がかった何かがいる。顔がでかい。
人じゃない。
「今日からお前は魔族の一員だ…」
おれはあまりにも突然すぎる状況に、
ただ、何がなんだか分からなかった。