私は、コーヒーが大好きだ。
なぜなら、好きなあの人を思い出すからだ。
週末は、いつも馴染みの、駅前の喫茶店に行く。
そこでは、お客さんが賑やかに話をしていて、いつも明るい雰囲気を醸し出す。
「あの・・・コーヒー、どうぞ」
彼女こそ、私の好きな人、コーヒーを、いつも絶妙なタイミングで淹れてくれる、萩中実さんだ。
萩中さんは、いつも穏やかな雰囲気を持っていて、私に癒しを与えてくれる。それを感じ取っているのは、私だけではないようだ。いつも、お客さんが、ニコニコしている。萩中さんを見ていると、心が洗われる。そんな気がする。
私は、長い沈黙を待って、「ありがと」とだけ言った。
長い黒髪に、赤いドレスがよく似合っている。最近流行の、メイド服みたいだな、と思った。
「あの・・・」
「ん?何?」
「コーヒー、おいしいですか?」
「ああ・・・そうだったね。うん、おいしいよ」
コーヒーを飲んだ後に、感想を言うようになっていたのを、思い出した。君の淹れるのは、もちろん。と言いそうになって、赤面しそうになるので、何も言わない。沈黙は、あまり気にならなかったようだ。
彼女と話した、あまりの恥ずかしさに、彼女が姿を消した後、コーヒーをごくりと音を立てて、飲んだ。不自然ではなかったか、と思ったが、周囲は、あまり気づかなかったようだ。
彼女目当てに、コーヒーを飲みに来るのだが、今日は、いつもよりまた、キレイに見えた。周りにいる、男共が、急にライバルのような気がしてきた。焦っているのかな、俺・・・。
私は、来週も、また来ようと思った。