世界で一番、好きな人。

作者一花








癖がつきやすい、柔らかなその毛は猫そのもので。









いいや、毛だけじゃない。








笑ったと思えば、頬を膨らませて。











目を潤ませたと思えば、口元を緩めて。


















―― ああどれだけ、どれだけ君は僕を弄ぶ。 ――










伏し目がちに、口を結んで涙をこらえる君よ。








何を我慢している、何を抱えている。













子猫みたいに可愛くて気まぐれな君。

















「 私、猫嫌いだし。 」










そう言って腕の中で、いつまでも皮肉じみていて。











どうか、泣かないで。