うのたろう

うまい表現、うまい構成、うまい文章
ふつうに、うまい。
ストレートにそう思える作品だった。

物語は主人公・大貴の一人称で語られる、未知の気持ちに首をかしげる物語。
情景描写を極端に廃した、感情の一人称だ。

中学生のころの恋を知らない大貴は、おとなになり、まだ恋を知らないままである。
途中、小学校時代のエピソードが回想として挿入されているので、物語の奥ゆき(この作品の場合は大貴の心だが)はさらにひろがる。

それが、とにかくすばらしい。

また。
文章力や構成力がかなりあるので、読んでいて本当におもしろいと思った。

計算されて書かれている小説というのは、そういった有無をいわさないおもしろさがある。

さらにこの作品は表現も秀逸だ。
ところどころにあらわれる表現に作者のセンスを感じる。

一例をあげると、以下のような表現がある。


それは俺の人生で二番目に関わる名字ではなくなるということで。これから先、彼女の名前を間違えて書くことになりそうだ。


あとがきをいれても、たった27ページの作品だ。

だまされたと思って、ぜひ読んでもらいたい。

おすすめだ。