ある日、パッと目が覚めた子ぐまは、隣りで寝ている母さんぐまをゆすって
「ボク、冬眠なんてもう、飽きちゃったよ。遊びに行ってもいいでしょう?」
けれど、いくら言っても、ゆすっても母さんぐまは起きてくれません。父さんぐまも起きてはくれません。
「もう!本当に行っちゃうから!!」
大きな声で言っても、母さんぐまはスースー。父さんぐまはガーガーガー。
怒った子ぐまは、ほっぺたをプーっと膨らませて外へ飛び出していってしまいました。
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生まれて初めて雪を見た子ぐまは真っ白くてサラサラの雪がとても
おいしそうに見えました。まるで、お砂糖のようだったからです。
ハチミツが大好きな子ぐまは
「食べてみよう!」
と雪に手をつけました。
「うっ・・冷たい!!」
子ぐまは、ビックリして尻もちをつきました。
「お尻も冷たくなっちゃったぁ、へへ。」
子ぐまの小さくて可愛いお尻は、真っ赤になっていました。
(雪ってすごく冷たいんだぁ)
手に少しついた雪を舐めた子ぐまは
(なぁ~んだ、何の味もしないじゃん)
と、ガッカリ。
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あたり一面、まっしろで誰も遊んでいないことに気付いた子ぐまは、少し寂しくなりました。
(早く春がくればいいのになぁ~)
一緒に遊ぶ友達が居なかったら・・・
(そうだ!遊ぶ友達を作ったらいいんだ!)
でも、どうしよう。
考えてかんがえた子ぐまは、いいことを思いつきました。
(目の前に広がる真っ白な雪を使って友達を作ろう!!)
冷たい雪を丸めて、転がして、少しずつ大きな雪玉にしていきました。
真っ赤になった小さな手に息を吹きかけながら、子ぐまは一生懸命に頑張りました。
青色の空が、少しだけオレンジ色になった頃です。
「やったぁ!やっと出来たぞ、ボクの友達」
そう言って笑った子ぐまのほっぺたは薄いピンク色をしていました。
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「さぁ、まずは何をして遊ぼうか?」
子ぐまがいくら話しかけても、雪だるまは答えてくれません。
「雪のだるまが、喋れるわけないよな・・・。」
子ぐまは、またガッカリして家へ帰ってしまいました。
その夜、子ぐまは雪だるまと仲良く遊ぶとっても不思議な夢を見ました。
ダンスをしたり、歌を歌ったり・・・夢の中ではお喋りすることだって出来ました。
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次の日、目が覚めた子ぐまは一目散に雪だるまのもとへ行ってみました。
でも、雪だるまは昨日と同じ場所に、ちょこんと座ったままでした。
(やっぱり夢だったんだ・・・)
しょぼんとして帰ろうとした子ぐまに誰かが話しかけました。
「待ってよ!一緒に遊ぼうよ!」
子ぐまは、驚いて辺りをキョロキョロ見回しました。
でも誰も居ません。
(やっぱり・・・)
そう思った子ぐまは首をかしげた後、ため息をつきました。
「早くしないと、空が真っ黒になっちゃうよ!」
またキョロキョロしてみましたが、子ぐまのほかに居るのは雪だるまだけです。
(まてよ、やっぱり夢じゃなかったのか?!)
子ぐまは不思議な気持ちになりました。
すると、雪だるまが話し出しました。
「昨日、夢に出てきた魔法使いに動ける魔法をかけてもらったんだ。魔法はボクが溶けるまでとけないんだよ!」
そう言って笑うのでした。
(なんだ、そうだったのかぁ)
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子ぐまは嬉しくなって、歌い出しました。
「♪ボクはくまの子。冬だからって、眠ってなんかいられない。
どこかに友達いないかな?見つからないなら、友達作って楽しく遊ぼう!」
続けて、雪だるまが歌いだしました。
「♪ボクがその雪だるま、子ぐまクンと友達の雪だるま。ほらっ動くことだって出来るんだ!」
子ぐまと雪だるまは、それからというもの東の空からおひさまが
上がってから、西の空へ沈むまで、鬼ごっこをしたり、かくれん
ぼや追いかけごっこをして楽しく遊んだのでした。
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