麻井深雪
不自由な恋愛
遠距離恋愛をしている主人公。
恋人とは結婚を意識しつつも、彼の為に親元を離れて遠い土地に嫁ぐことに違和感を感じている。
付き合いの延長線上に結婚を見てしまう大人恋愛ならではのしがらみを描いています。
主人公の性格が形成された背景や、彼の手先が器用で優しい性格。
描写がとても丁寧で、内容は恋愛小説ながらも、人物の息使いを感じられるような、まるで純文学に近い世界だと感じました。
静かに進むストーリー、別れ話の最中に燃えて短くなるろうそくの描写が見事でした。
感情を引き出され、思わず涙ぐみました。
ただ残念なのは、別れの悲しさ、切なさの余韻が勝ってしまい、ラストの主人公に共感できずに読み手である自分の気持ちが離れてしまったことです。
ページ数規程の都合上でしょうが、冒頭で大人恋愛は不自由なばかりと言ってるのに、ラストでは大人恋愛は楽しいと思えるようになった、この変化に共感できるエピソードが少し弱かったかなと思いました。
大人になるにつれて絡んでくる色んな要素を足元に例えた題名のセンスがとても素敵です。
安定した文章力でスラスラ読めました。