清乃
「静」と「動」の間
今現在、主人公は静と動の狭間だろう。揺れるシフォンスカートがそのまま彼女の心模様だ。
10代の読者様だと、もしかしたら有となおの恋愛は少々納得できないものかもしれないと思う。
なおには有を引き止めるなり、結婚を切り出すなりのバシっとした男らしさを見たかったのではないだろうか。
けれど、なおは引き止めることなく笑顔で有を見送る。
――オトナ恋愛
お互いの感情だけではもはや突き進めないしがらみがある。
家族、仕事、環境、育ちの違い。
そういった諸々ひっくるめて、笑顔で見送らないといけない時がある。
悲しみに打ちひしがれた彼女の背中を目に焼き付けねばらない責任が。
どんなに何かを呪ってもどうすることも出来ない、ちっぽけな自分を認めないといけない瞬間が。
背後に見え隠れするなおの心情、有のなおへの気持ちの深さが涙をさそう。
オトナ恋愛らしい、たわみが切なくも愛しい作品である。