麻井深雪

成長する姿に感動
恋愛ものというより、主人公が周囲に影響され、生き方を考える成長ストーリーという色あいが強いです。

学校の成果主義に反発して、勉強を放棄し落ちこぼれている主人公。
楽しいのは友達とのおしゃべりという、どこにでもいそうな女子高生の絵里。

最初はリアルな女子高生像に感じていましたが、修学旅行で戦跡を前にして戦争の話を聞いているあたりから、彼女のまっさらとも言える純粋さに好感を覚えました。

そこから少しずつ自分の生き方について疑問を持ち、悩み、努力する姿が丁寧に描かれています。

最初はその情熱をバイクの免許取得に向けてしまったりする様や、努力しながら挫折も味わう過程がとてもリアルだと思いました。

だからこそ最後の絵里が両手を空に広げたシーンでは、その感動を共有することができたと思います。
題名の意味も素敵でした。

そして冷たく当たっていた絵里を受け入れてくれた優佳。優しく厳しく導いてくれた家庭教師の崇。両親、教師、恋人・・・。
登場する全ての人物が優しく、温かい気もちにさせてくれました。

内容が濃くて深く、短編とは思えない読みごたえがあります。