麻井深雪
切なくて優しい物語
初恋の彼トオルを亡くして、もう恋はしないと誓ったキホ。
そんな彼女の前に突然現れ、「惚れたよ」というマサヤ。
最初は惚れた理由もよく分からなかったし、マサヤの自信満々な態度に好感が持てませんでした。
けれど読み進めていくうちに、マサヤがキホもトオルも知っていたこと。
そして、実は自信なんか全然なくて、ただ必死だったこと。
明かされるマサヤの真実に引き込まれ、どんどん彼のことを好きになり応援する気持ちになっていました。
けれどトオルの「僕以外の人を好きにならないで」の言葉は重く、このままマサヤと付き合うのも複雑な気持ちもありました。
そんな読み手の気持ちをスッキリと解決させてくれる話の運び方は上手いなと思いました。
両想いになれても、お互いが不安に思う微妙な心理も共感ですし、嘘を吐かれた時、また空を見上げてしまうキホちゃんが切なかったです。
お互いのお母さんのキャラも可愛くて、著者さま独特の温かい雰囲気がそこかしこに感じられました。
気になるマサヤのメジャーデビュー直前で終わってしまったので、続編も楽しみにしたいと思います。