「ここには生きたい人がたくさんいるのに、私は死にたくてたまらない。」
病院の屋上で、死ねない彼女は言った。

僕が恋をしたのは、吸血病という病気の少女だった。


吸血病。


数万人に1人の確率で、生まれた時から歯が生え揃っている子どもが生まれる。


その子どもは成長するにつれ、吸血欲求が生まれて人の血を吸う。


吸われた25歳以下の人間は即死。


25歳以上の人は吸われた分だけ老いていく。


吸血病の患者は20歳になると不老不死になる。


25歳以下の人間の匂いで獰猛になり、血を吸うと一時的に身体能力が強化される。


25歳以上の人間の血をすうと、吸った分だけ老いて死ぬ。


原因も治療法もわからない吸血病は、発覚したと同時に隔離され、家族は政府から数千万の金銭と引き換えに親権破棄を命じられる。


吸血病患者は”吸血種”と呼ばれ、隔離された施設で生き続けるという。