あの日彼を選んでいたら。

作者アオイ

あの日彼を選んでいたら今の私は違う人生を歩んでいたのかな。ずっと大好きだった彼と行くはずだった上海行きの飛行機に乗らなかったあの日。私はずっと後悔し続けていた。

今日は特別寒い。私は最近だんだん自分じゃなくなる感覚がする。誰か別の人。今私は誰の人生を歩んでいるのだろうか?


毎日子育てと旦那の世話に追われて、自分のことなど構う余裕などない。それでも時間は残酷に過ぎ、あっという間に1日は終わってしまう。でも、寝る前の少しの時間、ふとあの日のことを思い出してしまう。

あの日。それは私が彼を捨てた日。彼は私が突然いなくなった事を恨んでいるだろうか?それとももう忘れただろうか?

あの日私は上海行きの飛行機に乗らなかった。本当は乗れなかったのだ。でも彼は私が乗れなかった事を知らないのだ。何日も前から彼は計画を立てていた。

「とうとう行くんだな。サユと上海」少し照れ臭そうに電話越しに言う声は、いつもの冷静さを置き忘れた情熱的な声だった。今でもあの日の彼の声は忘れられない。忘れたくても、まだ私の気持ちはあの日置き去りになったままなのだから。