その時あたしが隣を見なければ、運命は絶対に変わっていたと思うんだ。
先生があの日家の鍵を忘れなければ、あたしは一生、先生の記憶に残ったりしなかったと思うんだ。
少し引っ掛かるくらいで、それはほんのすこしで。
「好きになった子はいたよ。勿論。
でもなんか……
絶対に幸せにしてあげられない自信があった」
生徒に絶大な人気を持つようになった、高校生活最後の年に赴任してきたイケメンの先生。
先生が隣に引っ越してきたことから、
あたしと先生の静かな交流は始まった。
「信用してるからあたし、先生のこと」
そう笑うと、先生は嬉しそうにありがとうと言う。
だから絶対に言わない。あたしは。
先生のことが好きだなんて。