そろそろ来るであろうクリスマスに思いを馳せて、最後のストーリーに胸が熱くなりました。きゅんきゅんが いっぱい詰まっていて、思わず笑みが零れ、自然と元気が漲る本作品。
 コントみたいな面白い始まり方に笑い声を抑えることは出来ませんでした。けれど、それとは対照的に萌花は予想だにしなかった痛くて苦しい過去や家庭の事情を抱えていて。あんなに笑えるようになって、異常なまでのブラコンになってしまった、その背景を知った時は、切なさで胸が張り裂けそうでした。一人は寂しい、怖い、って気持ちが少しだけわかる気もして、余計に感情移入をしてしまう。どんなに愛情を注いだとしても、優劣はつけられないけれど、一人からのものだけでは、どうしても脆く感じてしまうのだろうな、だとか、依存すると共に、自分だけを見てくれている誰か、を探し求めてしまうのだろうな、だとか、様々な想像を掻き立てられる。そんな陽と陰のコントラストにも目を奪われました。
 個人的には、性癖を受け入れてくれる人ってなかなかいないと思うので、四月一日くんみたいな、友達の延長線上みたいな関係に羨ましさが募りました。けれど、彼が萌花のことを理解し、萌花のことをちゃんと見つめられたのは、紛れもなく、彼自身が孤独だったからなのではないか、と考えることもできて。そんな色んな立場や想いが絡み合って成り立つこの人間関係にリアリティーさも溢れていて。楽しく拝読できるのに、これだけ多くのことを考えさせられるだなんて、と ますますこの世界観の虜になっている自分がいます。
 色んな過去を抱えた彼らが見せてくれる景色は本当に綺麗で暖かくて、そこには等身大の青春が確かにありました。そして何より、彼らの紡ぐ台詞の一つ一つに胸を鷲掴みにされて。特に萌花の言葉『知ってるだけで、解ってたわけじゃなかったんだ』が印象的でした。これはどんな人間関係にも当てはめられる名言だな、と胸を打たれ、本当に相手の立場に立てているのか、自分本位になっていないか、もう一度確かめるきっかけにもなりました。そして萌花の成長と徐々に心を開いていく過程には目が潤みます。最初の方は私が萌花を応援していたはずなのに、気づけば私が彼女に背中を押してもらっているという逆転現象が起きていて、本当に驚かされ、繊細に揺れ動く心情描写に心揺さぶられました。
 これからも、可愛くて仕方がない萌花と不器用だけど何だかんだ萌花のことを気遣う優しい、目つきの悪いお兄ちゃんと格好良すぎる不憫なヒーロー四月一日くんと意外とクールでサバサバしてる香さん達が幸せな日々を過ごしてくれることを願っています。

 みんなのことが愛おしくて堪らなくて、勝手ながら箱推ししています笑
 素敵な作品をありがとうございました