生きたまま生まれ変わろうと、無闇に刷り直し続けた春はもう青くない。今さら消せない太郎の刻印、二度と戻らない私たちの十代。その最後の最後に私は真夜中の山道へ打ち捨てられた。不覚にも命拾いした日曜、昼過ぎの不味いラーメン、イタ車、競馬中継で走るガンバレタロークンと
「単勝一点五百万!」
愚かな賭けとともに私の二十代が幕を開ける。全財産を軽やかに投げ売って笑った、あの手のなかに希望があった。記憶はいつも星みたいに遠く輝く。だから握って、今度こそ明日まで連れていく。優しい日も走馬灯にはまだ早いよ拝啓、私の愛しい太郎、もしこの朝日が見えたら笑って。