終電まであと10分
自然と早まる足
頬に当たる風が昨日より冷たく感じる
流れゆく人の波
スマホを見ながら歩く人
酒に酔いおぼつかない足元の人
大声で笑い合う人
...スっと大きく深呼吸をする
足を止めて、大きく大きく息を吸った
星のない夜空へと伸びるビル
「星...しばらく見ないな、」
誰かに話しかけるわけでもなく、ぽつりと溢れた。
スマホを取り出そうと右手を制服のポケットに手を入れる
ガサッ。
紙切れの音と共に1万円札が2枚顔を覗かせた
今日もまた、少し汚れた自分
昨日より、少し汚れた自分
...「__♪」
今日もまた、聞こえる
透明感のある音に乗せられた歌声
それは優しくて、柔らかくて、寂しくて
その方を見ると必ずいる
フードを被り、駅前の路上のベンチに座ってギターを弾く男の子。
南口改札
彼の名前を、私はまだ知らない