複雑に絡み合った一本の糸がほどけた時、真実が見える……
不思議な世界観と新の置かれた、非現実なのに現実味を帯びた何とも言えない状況にグイグイ引き込まれ、寝食も忘れて読みふけった。そんな今日一日が幸せで仕方がなかった。1-3-42と1-3-10は私にとってはお気に入りの番号になりました。
本作品は恋愛ファンタジー小説、と一言で片づけられるような物語では無い。温かくて、でも痛くて。新と林太郎の等身大の葛藤なんかは特に、状況は違えど、痛い程よく伝わってきて。ああ、青春って、人の生って、こんなに熱くて脆かったんだと、その儚い煌めきに恋焦がれました。読了後の今、爽快感に包み込まれています。
時には事実は残酷で冷たい。それでも私達は前に進む使命を背負っている。挫けそうになっても、ぶつかっていく。何度でも這い上がっていく。そんな彼らの姿勢に心を幾度も打たれました。
人生、正解なんてないけれど、自分にとって後悔のないような生き方をしたい、とあらためて強く思えた。私は恥ずかしいことに、真っすぐなことが格好悪いと思い込んで、それを忌避して、捻くれていた時期もあった。自分には眩しすぎて、そんな姿勢がどこか憎くて、逃げたくなって。でも、どんな姿でも人間らしいのかもしれない。その人間らしさ、が面白いのかもしれない。けれどやっぱり、新みたいな女の子は健気で、強そうに見えて、でも弱くて。だからこそ、芯があって、格好が良い。彼女の姿に、心から憧れた。「まだ諦めるのは早いぞ」となんだか伸二に言われる気もして、思わず笑みが零れる。
また、最後は怒涛の展開にぐいぐい引き込まれ、なぜだか視界が大きく揺れ動き、気づけば瞳から、自分でもびっくりするほどの熱い熱い涙が溢れ出ていた。
烏を見つけたら、きっと私は彼を思い出してしまうのだろうな、なんて思いながら、今は、大嫌いだった夏を愛おしく感じる。
ありがとう。その五文字は自分が思っている以上に深みがあって、あったかい。明日の私の背中を押してくれる、そんな優しい光だった。
フレキシブルに、歩もう。そう、希望を胸に明日も私はあの魔法の五文字を紡ぐ。
素敵な作品をありがとうございました