紫苑―愛しい君に―

作者miyako

「紫苑-シオン-」
名前を呼べば、君が振り向く。それから、柔らかな笑みをうかべる。
君はきれいな花を咲かせた。
これは君の再生と旅立ちの物語だ。




ぼくは今でも、君とすごした時間は幻だったんじゃないかと思うことがある。


だって、君の存在はいつだって曖昧で、不安定だったから。


君はそれをきいたら、怒るだろうか。

悲しむだろうか。

自分を責めるだろうか。

それとも、あの日々を思い出し、ぼくを想ってくれるのだろうか。



それさえ、今のぼくにはわからない。

なにも知らないまま、知ることができないまま、君は姿を消した。


それでも、ぼくはあの日々が存在したことを確かに信じてる。

君を想うたびこの胸を満たす痛みと温もりは、陽炎なんかじゃ決してない。

陽炎には作り出せない。


―紫苑 元気か

いま 一体どこにいる

おれはいまでも 君を想ってる