茜色の夕焼けを見ながら、今日も「tRance」は変貌する。昼はアンティーク調の店内から珈琲の香りと、人の話し声がしっとりと流れる。それが、夜になると一変。漆黒の暗闇に辺りの景色がが影を潜めた後、ぽつんと一つ明かりの灯っている場所。そこが「tRance」。


18歳の瑛子はそこで住み込みで働いている。長いストレートの髪を一つ結びにして、細長い目はいつも鋭く何かに目を追っている。お世辞にも社交的とは言えない性格が、人を寄せ付けない雰囲気を出している。


一転して、オーナーの清晴は常に爽やかな笑顔をしている。少し長めの髪は、歳相応の色気を出しているし、整った顔立ちに、思わず目を奪われる笑顔がセットすれば、虜になる客も少なくない。

ある事故から清晴が瑛子を住み込みとして雇い始めて早三ヶ月。瑛子は日に日に周囲の環境、常連客達の人となりをみつめる余裕ができてきた。