あぁ、まただ。
どこからともなく感じる視線。
そんな奇妙な感覚が数日続いたある日。
シャッ…
勢いよく開いたカーテンの向こうには、ただただ広がる闇。ポツポツと街頭や車の光が道路を示す。見上げた空には琥珀の穴がぽっかりと開いている。
いつもと同じ見慣れた風景。
ここは2階。
人が覗けるわけがない。
視線なんて感じるわけがない。
ひとつ大きなため息を落とし、
また、枕に顔を沈める。
枕側の壁に掛かる時計だけが
長い一秒を刻み続ける。
ハッと何かに誘われて振り向く。
何もない。
何もいない。
そう、なにも…。
「…バカバカしい。」
呟きは誰にも届くことなく
無機質な部屋に溶けて消えた。