繭結理央

準備ある定義を
文字数の都合上、3つだけ挙げる。


冒頭「今の日本はモラルが低いと言え」という点に関し、どこの、いつの、誰の……“5W1H”による比較を以てまずは定義してほしかった。地方・時代・個人などによりモラルの異なる可能性を素材と挙げ、定義し、ようやく考察は始まる。モラルが作品の主軸たりうるための定義が不明瞭。また「常識的に考え」や「日本文化とは」との投げかけに際する著者の理論も然り。準備不足は否めず。1p目の最後に「長い前置き」とあるがあまりに短い。

携帯小説を嫌う人・ギャル文字・タメ口・誹謗中傷・荒らし……など踊るが、彼らがなぜ各行為を執るのかの思索も弱い。肯定せよとはいわないが“敵”を知る具体的な姿勢がもっとあってよかったと思う。この作品が“公表された考察”であるために、私見なりとも、読者を巻きこませる素材の調達は必要と感じる(このままではただの愚痴と受け取られかねない印象)。

「刃に絹を着せぬ」とあるが、まろやか。もっと斬りこめる。


価値あるテーマ。が、呆気ない終焉。短編では勿体ない。ぜひ500p限界まで煮詰める“粘り”を。応援をこめての星3つ。