うのたろう
読んですごく得したなと思える作品「群」
物語は色の違う、第一章・SS・第二章で構成されている。
第一章は、かなり上質な絵本を読んでいる感覚だった。
「ひとりぼっちのたんじょうび」
そんなタイトルが似あいそうな、かわいらしい物語だ。
ケータイメールを「おてがみ」。
やましょうを「おともだち」。
そんなふうにワード変更して、夏休みに誕生日をむかえるちびっこたちに読みきかせてあげたくなるようなあたたかさがある。
次にひと休みのSSをはさみ、第二章がはじまる。
こちらは一章とは打って変わって小説色が強くなる。
一章ではなかった主人公の名前がでてきて、初々しい高校一年生の等身大の姿を見ることができる。
こう説明をすると雑多に思えるが。
1・SS・2と物語としてはしっかりとつながっている。
芯の部分がまったくぶれていないので、このちぐはぐな感じが「おもちゃの缶詰」的な豪華さになっている。
ぶつ切りの短編集のたのしさと、続きもののおもしろさを同時に持っている作品で、読んでいて、すごく得したなと思える。
読んで絶対に損はしない、あたたかく、かわいらしい作品だった。