彼に手を伸ばしても
その手は宙を撫でるだけ。
彼にもし触れたなら
それは挑戦状を叩きつけたのと同じこと。
半狂乱くんは今日も嗤う。
切れ長の目は瞳孔が開き、歪む。
薄い唇は不敵に口角をあげて死を囁く。
ーーーアンタの心臓は取り出しても動き続けんのかな。
え、何。欲しいの?私の心が欲しいの?ーーー
そんな彼に恋をしたのが私だっただけ。
私が偶然バンパイアだっただけ。
それを彼はわかっていない。
それを彼にわからせたい。
これはバンパイアである私の話ではない。
半狂乱くんに恋をした私が、
偶然バンパイアだっただけ。