マーメイドのミシェールとミリアの儚い恋の物語。涙で語り継がれる人魚とヒトとの愛の物語を童話に記そうと思いました。ようやく完結しました。



春が近づくとこの街の空は紫色の雲に覆われる。



そうして、毎日毎日冷たい霧雨が降り続くという。



伝説によると、昔この街の近海に住んでいた人魚が、若者と恋に落ちて、悲しいお別れをして以来、この季節の天候はずっとこんな風に、どんよりとしているということだった。



人魚は想像上の生き物。


誰も見たことはない。


だが、悲しい恋の物語は時を経て今に伝わった。



誰もがその話に涙し、悲しみにくれたから、この街に住む人々は皆、この季節を「マーメイドの涙」と呼ぶようになったと言う。