幽玄 ~背を向けて立つ~

作者九音

お能の家元を父に持つ優一と歌手を目指す絵美。お互いに似た何かを内包する二人は、惹かれあい必要不可欠な存在になっていく。

何百年も続くお能。その宗家家元の一人息子である物部優一は、幼少時から厳しい稽古を受けてきていた。押し着せられた宿命に鬱積した感情を抱えながらも、他の道も知らず。ただ惰性で周りの望む役目を演じていた。

そんな優一の前に一人の少女が現れた。

少女の名前は美園絵美。優一と同じように周囲から浮き立った、孤高を纏っているような女の子だった。

なんとなく、美園絵美を気にしていた優一は、偶然にも彼女のもう一つの素顔を目の当たりにする。

必然のような偶然の出会いは続き、優一と絵美は親しく話すようになる。

お互いに、似たものを内包する二人は、惹かれあい、必要不可欠な存在となっていく。