何百年も続くお能。その宗家家元の一人息子である物部優一は、幼少時から厳しい稽古を受けてきていた。押し着せられた宿命に鬱積した感情を抱えながらも、他の道も知らず。ただ惰性で周りの望む役目を演じていた。
そんな優一の前に一人の少女が現れた。
少女の名前は美園絵美。優一と同じように周囲から浮き立った、孤高を纏っているような女の子だった。
なんとなく、美園絵美を気にしていた優一は、偶然にも彼女のもう一つの素顔を目の当たりにする。
必然のような偶然の出会いは続き、優一と絵美は親しく話すようになる。
お互いに、似たものを内包する二人は、惹かれあい、必要不可欠な存在となっていく。