ふと、記憶がすり抜けていることに気づかされた少女と、その隣に居た不思議な男の物語 狂愛/記憶障害/監禁/
『真実だけが、欲しいんだ』
―――はあっはあっはあっっ
息をすると、つんざくような鉄の味が喉に広がる。
困ったほどに、肩からの出血は止まらずに、
私はワケもわからないまま
この大きな無人の道路を走り続けた。
ナニから逃げて。
ナニから救われようとしているのかも。
―――はあっはあっは、
荒くなってゆく、立ち込めた真っ白な吐息は
言葉を発しないまま。