うのたろう
しっかりとして、うまい
物語の構成にむだがない良質の作品だった。
主人公・岬結衣はサッカー部の佐伯翼に淡い恋心をいだく。
はじめはただ見ているだけの存在だった翼くんだが、ひょんなことからふたりは接点を持つようになる。
物語後半で明らかになるが、翼くんも結衣に惚れていたということ。
作品づくりの技術がかなりある。
冒頭の翼くんの練習シーンからクライマックスの試合の流れ。
こういう連続性が小説を読むたのしさのひとつだ。
また。
キャラクターにおいても徹底的なむだを排除し、それぞれがそれぞれの役割をになっている。
過去に対しトラウマのある主人公・結衣のつくりこみかたは本気でいい。
考えかたや行動すべてに、おどおどした自信のない人間の雰囲気がこもっている。
この作品は結衣の成長物語でもある。
過去にトラウマを持ち、おどおどしていて、自信を持てなかった結衣が、クライマックスでは、きちんと成長している。
うまい小説を読みたいかたは、この作品を手にとれば、まず間違いはないと思う。
おすすめです。