小泉秋歩
「視点」が斬新なSFジュブナイル
日高家の人々――おバカでお調子者のナツ、その妹で毒舌家のサヤ、のほほんとした彼らの両親、そしてトラブルメーカーの従姉のミオの5人――は、ちょっと…いや…かなり常識がないものの、ごく普通の家族である。
たった一点、彼らが、未来から来た未来人であることを除いては。
そんな一家を呆れながら見守っているのは、“フカちゃん”こと「俯瞰の眼」。
彼らは三ヶ月限りの「現代」での生活をハチャメチャに楽しんでいた。
そんなある日、ナツは、つむじ風の音に紛れて、悲しげな少女の唄声を聞く――
コメディタッチで綴られるSF小説。
軽い口調にたっぷり笑わされながらも、ナツと少女との関係が進むにつれて物語はシリアスな面を見せ始め、ナツ・サヤ兄妹の心の成長を力強く描いていきます。
特筆すべきは、ストーリーを語る「視点」に「未来人を監視する装置=フカちゃん」という存在を設定し、その眼から見た光景という形式を取っているのが斬新です。
SFが苦手な方にも読みやすい青春小説です。ぜひご一読を。