東今日太は、ベレッタM92のスライドを引いて、9ミリパラベラム弾を素早くチャンバーに送り込んだ。
渇いたスティールの操作音が、戦闘体育館の高い天井に、不吉な小鳥のさえずりのようにこだまする。
「今日のターゲットは誰だろう」と、今日太は、バリケードの陰で無表情につぶやいた。
ターゲットとは、その日の対戦相手のことだ。
相手の顔を見るまで、それが誰なのか告知されることはない。
それがハイスクールの規則だ。
アイスクリームのような、冷たい沈黙を破るように、誰かのハンドガンがスライドして、第一弾がチャンバーにセットされた。もちろん実弾だ。
まだ敵は遠い。