うのたろう
卒業式のひとコマ
卒業式のひとコマといった雰囲気の作品。
主人公・波瑠は本日卒業式。
式が終われば親友の美月とも離ればなれになってしまう。
そんな波瑠には片思い中の男子生徒がいる。
となりのクラスの樹である。
波瑠は式のまえに樹のげた箱にラブレターをしのばせた。
そんななか、式がはじまって……
卒業というイベントは卒業するものにとっては人生の岐路であり、さまざまな思いが交錯している。
未来への期待はあるが、現在とのわかれはひどく苦しい。
波瑠の一世一代の告白は、おさないながらも現在と未来をつなぐ希望のようなものである。
10ページという短編のなかに、卒業式のひとコマが切りだせていた。
状況を描写するより感情の会話を優先させたのは、短いページ数のなかで、卒業というイベントに対する少女の心の比重だろうか。
彼女にとっては、式としての卒業よりも、片想いの男の子に対する気持ちや、友人と離ればなれになってしまうことのほうがよほど大切だというリアルを感じとることができる。
読後感は、ほほえましい。