偽りの夢

作者美雨

結婚式の前日に彼を亡くした主人公。結婚式当日は葬式へと変わってしまった。彼の死を悲しむ主人公の前に表れたのは彼と同じ顔と声を持つ青年だった。






   愛せなくていい

   忘れたっていい


   だから

   私だけが愛する

   たった一つの命を

   消さないで



   世界で一番

   私が愛した人は


   自らこの世を去った



   暗闇に突き落とされた

   私の前に現われたのは

   愛した人と瓜二つの

   青年だった



   「愛さなくていいから

    傍にいて」



   違う人。

   分かっていても

   離れられなくて



  「俺は兄貴の変わり

   じゃない。

   お前も俺を兄貴と

   重ねるのか」



   悲しき運命を背負う

   青年と


   偽りの命を愛する

   女の



   現実への小さな抵抗