初めて彼と会ったのは寒い冬から暖かい春へと季節が変わる3回目のオフ会の時だった。


「はじめまして」


身長170センチほどの男が待ち合わせ場所である『とらのあな』前に姿を現した。

ニルヴァーナのプリントが入ったTシャツの上に黒い色の薄手のジャケット、そして控えめなダメージ加工が施されたデニムジーンズという暖かくなった春先にぴったりの爽やかな格好だった。以前の集まり同じように全員が簡単に自己紹介をする。

季節的にだろうか、秋葉原の通りには同じようなオフ会での徘徊が目立っていた。


「ウメです。宜しくお願いします」


彼はおれとチャットで毎日のようにしゃべっていた。

いうならば、おれ達はスクラン喫茶のチャットの定番メンバーだった。

だが、実際に会ってみるとチャットでしゃべっていた印象とは程遠かった。

チャットではしゃべりやすかったのだが、今目の前にいる彼は緊張のせいか口数が少なかった。