夏風ゆらり

作者皐月 悠

夏の風は、ゆらゆらと頬を撫でる。それは、そこに存在するはずのない、少女の吐息。

 夏の風は、ゆらゆらと頬を撫でる。



 それは、そこに存在するはずのない、少女の吐息――。




 感じる。


 熱気。


 蝉の声。


 風の匂い。


 夏の思い出。



 ――あの頃と同じ。



 変わったのは、そこにいるはずの友達……。



 今日も、顔を撫でる夏の風。


 耳に届く愛しい声。



 それらは、あの夏と同じく、生暖かいものだった。