ここから眺める夕陽を

作者麻生靖倖

キミが一番好きだった、興福寺の石段から眺める夕日をボクは今、一人で眺めている。月日の経過とともに薄れていく彼女との記憶。色褪せはじめた彼ら二人の記憶の復元。

ボクはまた、ここに来ています。


興福寺の石段から一人、

猿沢の池の向こう側を

淡い色に染めながら、

沈んでいく夕陽を眺めています。


キミと二人で何度も眺めたこの夕陽を。


ボクは今、一人で眺めています。


キミが一番好きだった、

ここから眺める夕陽を。



ーーーーーーーーーーーーー



月日の経過とともに、薄れていく記憶。

虚しさと孤独の中で、喪失感と自責の念にもがき苦しむ彼。



色褪せはじめた彼ら二人の記憶の復元。

荒み、壊れてしまった彼の心の再生。



小説として、もう一度。

薄れて色褪せてしまった彼と彼女の過ごした日々の記憶が、

あの頃と変わらぬ彩りで、あの頃と同じ鮮やかな彩りで、

あの夕陽のように再び色鮮やかな色彩に染まり、

永遠の彩りとして蘇ることを願って。


私から彼と彼女、二人へ、

そんな願いと祈りを込めて

書かれた回想録的な物語です。