その少女はいつも黒い服ばかり着ている。
そして蝶のようにひらり、と
両手を開き、指揮をする。
だから皆には、「黒蝶」と呼ばれている。
その少女が「恋」をした。
とてつもなく苦しくて、甘くて、すっぱくて、
とてもとても悲しい「恋」をした。
なにもかも黒に見えてしまう少女にとっては、
初めての色だった。