久遠マリ

幻想電脳世界
ラスト付近での、作者による読者への最高の裏切り。

よく練られたストーリーや異世界の仕組み、読みやすく丁度良い文章。
主人公の心の変化が、読んでいて心をほんわり温かくさせてくれます。

ただ、主題が若干曖昧なのと、何の為の“裏切り”だったのかがいまいちよくわからないのが残念。
裏切って楽しむにしては鋼馬は中途半端な悪役(もっとマッドサイエンティストの方が良かったかも?)であるし、裏切った後に嘆く人を見て信じられていたことを実感したかったのか、と考えてもはっきりしない。
裕也の急な変貌っぷりが激しすぎたのも気になりますが、これはこれで面白いのでいいかもしれません。

後、想いを台詞調にして少々長く書くとグダグダとだれてしまうので地雷かも。

でも、最後の朝のシーンはなかなか感動出来るものでした。
晃の成長ぶりをしっかり見守ることが出来たようで。


かなり厳しめですが、所々に光るセンスは素晴らしいものでした。
これからの作品にも強い期待が持てる作家さんだと思います。