2012年4月5日。
今日は
ある女の死刑執行日だった。
女の名前は宮下愛莉。
彼女はまだ十六歳だった。
前代未聞の十六歳の死刑執行。
だがしかし
この決断に、反抗する者や
疑問を抱く者は誰一人として居なかった。
ーー私以外は。
何故反論が無かったか?
理由は簡単だった。
国民全員が彼女の死刑執行を待ち望むほど
彼女が犯した罪は大きかったのだ。
私はツテを通じて
彼女の死刑執行時立ち会った人物に話を聞く事が出来た。
彼女は死刑執行前に
宮下愛莉に尋ねた。
「何か遺す事はあるか」と。
彼女は執行台に立ち
これから死ぬと言うのに
慌ても、泣きも、喚きももせず
ただその
か細く
美しく透き通った声で
ただ一言こう言ったという。
「私はただ
愛されたかっただけなんです」
と。