人魚の命・完結

作者key

少し悲しい、人魚の話です

 ここは、どこだろう。

 目に見えるものは、何もかも暗く、時々銀色の粒が目の前をよぎる。

 耳は何の音も拾うこともなく、足も何も踏みしめていない。

 私は何をしているのだろう?

 体の感覚はなく、ただ寒い。

 私はどこへ行こうとしているのだろう?


 それすらもわからない。


 ただ、眠くて……だけど、瞼を閉じることさえ、なぜかできない。


 暗い、暗い世界を私は見つめ続ける。


 ちらりと、何かが見えた。

 暗い世界を泳ぐ……人魚?


 朱色の尾びれを波打たせ、体をくねらせる人魚……

 白い肌、ほっそりとした腕、暗い世界よりも、なお暗い色をした、まっすぐな髪がなびいている。



 薄れ行く意識の中で、私は人魚を見た。

 海水に美しい黒髪を流した、赤い赤い人魚……だ。