うのたろう

うつつのなかの鍵は夢と希望と愛
構成力が高く、細部や小物にいたるまで、一貫したこだわりが見られる作品でした。

物語の主人公は会社員のさくら。
恋人・陽介と同棲をはじめて三ヶ月目。
陽介の独特のあわただしいインターホンの音から物語がはじまります。

物語の展開は、さくら26歳の誕生日。
意味不明のおき手紙を残して陽介がとつぜんゆくえをくらませてしまう。
陽介に見捨てられたと思ったさくら。
音信不通でゆくえ知れずの陽介。
一年間があっさりとすぎていく。

そしてさくら27歳の誕生日。
この物語はクライマックスをむかえます。

合鍵、お守り、そしてラストのプレゼント。
この流れがとにかく緻密で、読んでいてにやにやしてしまいます。

個人的なベストシーンは、ペアのネックレスの形状。
明言されているわけではありませんが、ティファニーあたりのきゃしゃなデザインのものが容易に想像できます。

たよりないけど、たしかなかがやき。

陽介はどんなことがあっても、かならずさくらの合鍵をあけてくれることでしょう。

うつつのなかに夢がある、ちょっとすてきなおとなの恋物語でした。