遠野ましろ
未来を決めるのはいつだって自分自身
全体に清涼感漂う爽やかな作品。
主人公の『飛ぶ』能力に即した、改行多くエアリーなトーン。良い意味でこなれた文体、読みやすい。
冒頭に慌てた場面、数値を入れた点は効果的。インパクトを与え、引きこませる。
以降の彼との出会いと、心情の変化。起承転結が明瞭な話の中、惹かれる気持ちが実に自然に描かれていました。
土壇場で告白する場面。彼の、己の迷いをも吹き飛ばし、壁を越える姿も良いですね。
が、読後。どことなくライトだった印象でした。
例えば、雨打ちつく屋上での場面。
雨伝い、体温を奪われていく指先。かじかみ震える体。失うことに対する恐怖と同様『心情』という感覚が“失われ”、でも雨だけがリアルで。だからこそ、彼に抱きしめられたときに安堵という形で感覚が戻って来る。
等々浮かぶのですが、台詞が多かった。(P.22)
飛ぶ景色に関しても、高さ。眼下に見える景色、人影の大きさ。イメージ深まるよう、詰めを伝えてほしい所でした。
文章、ストーリーは素敵ですが、すみません。起承転結をもう少し掘っても良かったかな、と思うので星4つとさせて頂きます。