「負けられない戦いと聞いて…」
セクター35に降り立ったメルは現場と募集条件がまるっきり違う事に戸惑い、安堵した。|追憶都市《ポリス》の求人にありがちな齟齬だ。
自動小銃を帯びたメイドが二人、新人などお構いなしに談笑している。罠なのか本気で怠けているのかわからない。だが油断は禁物だ。最後の肉体が地上から消えて百年。戦争は仮想化されて続いている。
徴募局で支給された銃は本物だ。当局の認証がなされ引き金を絞ればプレイヤーキルできる。ただ、いきなり初陣でそれは御免被りたかった。彼我の戦力は十年前から拮抗してて、朝三暮四の和平協定が兵士たちの眠気覚ましに落ちぶれている。完全な停戦合意に至ってないが散発的な発砲はいい刺激になる。そこは向こうの歩哨も承知のうえで、わざわざ次の協定破棄を教えてくれる。
ホラー
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