「僕の国へ来ないか」プロポーズの言葉を聞いた野嶋朱里(29)は満面の笑みを浮かべて彼の胸に顔を埋めている。プロのダンサーとして参加したイベントで彼、ソンゴ・ブアブア(38)と出会ったのが半年前、アフリカ某国の在日大使を勤める彼が任期満了で祖国へ帰ると知った時、別れを覚悟していた朱里にとっては青天の霹靂だった。
しかし、自分にも他人にも厳しく何でも1番でないと気がすまない朱里にとって30手前でダンサーとしての能力の下降を感じていた今、大使と結ばれる事を断る理由はない。朱里は特段の準備もしないままアフリカの大地に降り立つ。だが、そこで驚愕の光景を目にする事に。裕福である事は聞いていたが、ブアブア家はもはや小国さながらの土地と豪華な城の様な建物で、コックや門番、果ては数えきれないメイドと思しき女性たちが働いていたのだ。
舞い上がった朱里は一国のお姫様然として振る舞うが、どうも会話が周りと噛み合わない。自国の王子が姫君を連れ帰り結婚したのにツレない態度の下々の者に不満を募らせた矢先、ソンゴに夕食を別にされた挙句、初夜をすっぽかされる。早朝、怒りに震える朱里の視線に飛び込んできたのは、メイドと仲良さげに別れのキスを交わすソンゴの姿だった。朱里は怒りに身を任せ喉元に槍を突き立てる。が、ソンゴは真剣な顔で皆を愛していると言い続ける始末。一夫多妻制。朱里はソンゴの47番目の花嫁だったのだ。
衝撃の事実を知らされた朱里は途方にくれるが、すぐさま熾烈な夫人内ヒエラルキー争いに組み込まれてしまう。いつもトップを走ってきた朱里にとってファーストナンバーと呼ばれる一桁台の妻たちから受ける人とは思えない仕打ちは屈辱でしかなかった。心を折られ惨めに日本に逃げ帰ろうとも考えたが、同じ様に虐げられている外国人妻からブアブア家では三ヶ月に一度、妻たちの順位を変えるイベントが催されると聞く。次の余興は奇しくもダンスだという。日本人が踊れるワケがないという空気の中、朱里は皆の度肝を抜き順位を上げる。やるからには必ず一番に。その目には力が戻っていた。右も左も分からない世界で朱里の第一夫人の座を目指す壮絶な戦いが今、幕を開ける。
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