彼女がその歌に込めた想い――人の心を動かすその物語は罪になるの?
物語という名の罪/黒川亜季
北の大地よりは暖かく、首都圏よりはずっと寒い地方にある木々の都の一角。
地下鉄駅と大きな森林公園に挟まれた寂しい広場で、彼女は夜ごと、歌声を響かせている。
伝えられなかった想いを、言えなかった言葉たちを、動けなかった後悔を切々と歌い続ける彼女。
誰も足を止めない、誰の耳にも届かないその歌声に、「私」はひとり耳を傾けている――。
彼女の歌声が呼び寄せる出来事と、「私」に課されたもの。二人の間に起こった短い出来事を描きました。短編です。