十年前、紫村明は出版社で働いているときに、吉行涼介と出会う。
涼介の自分を見つめる視線に何かを感じる明。
それが恋心だと気づいたとき、涼介は結婚。
福岡の支社へと転勤していき、明は深く傷つく。
一方その頃、角舘譲は長く付き合っていた中野信男が、自分には何も言わずいきなり姿を消したことで、傷ついていた。
お互い深く傷ついた状態で出会った明と譲。
最初は、互いの傷を舐め合うような関係だったが、二人は付き合うようになり、十年が経っていた。
譲が三年前に大阪に転勤になってからは、二人は遠距離恋愛をしている。
そんななか、譲が大阪勤務を終え、東京に戻ってくることになる。
それを機に譲は、マンションを買い、明と一緒に暮らしたいと口にする。
明は自分の心の中に澱のように残っている過去を清算しようと、かつての上司、井上彩夏に連絡をとる。
そして、明は自分と離れた後の涼介について知ることになる。
譲は、大阪で十年前に自分の前から消えた男、信男と再会する。
ニューハーフになっていた信男から、十年前、信男がどう思っていたかを聞く譲。
過去と決別した譲と明は、前向きに二人の未来へと踏み出す。