カノン・ライスリード公爵令嬢は、十三歳で希少な魔力持ち、つまり「魔女」だと判明して以来神殿で暮らしてきた。大好きな家族と強制的に引き離された生活を送ることになったカノン。その心の支えとなったのが、超絶顔が良いフェルナンド第一王子の肖像画だった。彼は継母である王妃に疎まれかなり立場が弱くなっているようだが、そんな世間の風潮は関係ないとカノンはフェルナンド王子を推して日々の慰めにしていた。そんなある日、魔女のうちの誰かが彼の婚約者として選定されることになる。神殿に来た彼が指名したのは、他の誰でもなくカノンだった。「せっかく婚約者になれるのなら、これまで心を救ってもらった恩返しに、今度は私があなたの身を危険から救ってみせるわ!」そう心に決めたカノンは、得意の「餅魔法」でもちもちのお餅を錬成し、フェルナンドに襲いかかる敵を蹴散らすことにする。「餅って凄いのよ! 敵の顔に投げれば目くらましに、手足に投げれば動き封じに、そして食べれば美味しいんだから!」そんな餅使いの魔女に全力で愛され守られて、死を望まれるばかりで生きる希望をなくしかけていた王子の心には愛と未来への希望の光が灯るのだった――。