「貴方に不正受給の疑いがかかっています。つきましては…」
そうら、来た。年末恒例行事の始まりだ。大規模な情報流出が起きたとカード会社から連絡があったが鴨リストに自分が載るなど夢想だにしなかった。
こういった個人情報漏洩のたぐいは企業と警察が巧く立ち回って星空の神話のように遠いところでかたが付く。そして被害は保険でカバーされ消費者は新聞三面の小さな囲み記事で事の顛末を知らされる。それほどになじみが薄い話だ。あずかり知らぬ孤島のデーターセンターに連なったラックサーバの片隅で電子が激しくぶつかりあっている。
そう呑気に捉えていた。