千年も生死を繰り返した居候の修験僧が、女子大生に語る千夜一夜物語。
わたし(栞=しおり、女子大生)の家に、一人の三十代の修験僧が居候している。家族の誰も、彼の素性や本名、なぜ家にいるのかを知らない。しかも、まるで家族同然のように接している。わたしは御坊(おんぼう)さんと呼んでる。彼によれば九十九回死んでは生き返ったという。大きな罪を犯したので、如来から「百八回繰り返さないと往生できぬ」と申し渡されたというのだ。毎夜、御坊さんは平安時代から現代に至るまで、どんな生き死にをしてきたのか、語ってくれるようになった。幽霊、妖怪、魑魅魍魎との戦い・・・失敗談も、泣き笑いもある。・・・こうして、わたしだけの「千夜一夜物語」が始まった。・・・
合計二十編の怪談を語るのと同時並行して、栞は次第に魔女へと転身していく二本立てのストーリーです。
(本連載は、すべて古今東西の古典的な名作怪談や文学作品を素材として、根本から作り直した翻案小説です。一夜読み切りの短編集です。原作を越える深さ、面白さが出せているでしょうか。)