●物語全体のあらすじ
小島勇樹(23)は幽霊だ。2年前に死んだが成仏せず、唯一勇樹の事が見えて会話ができる義理の妹の沙里(23)と暮らしている。二人は親の再婚同士の兄妹だった。
沙里は頻繁に彼氏のさとるのDVにあっている。そんな沙里のことを勇樹は心配しているが、沙里はさとるのことが好きというよりも、勇樹に心配されるのが嬉しく、また勇気が成仏できないのは自分がこのように放っておけないからだと考えているため、さとるとの交際をやめない。
勇樹も自分のことを頼りにしてくる沙里が可愛い。愚かだと分かりつつも、沙里の傷を(勇樹は物や人に触ることはできないため、精神的に)癒している2人だけの時間が至福の時だと感じている。
幽霊の勇樹は物をすり抜けてどこへでも移動できる。沙里の帰りが遅く、心配になった勇樹はさとるの家に行く。すると、そこには沙里とさとるの他に中年男性がいて、沙里がその中年男性との性行為を強制されていた。さとるは沙里を利用し援助交際でお金を稼ごうとしていたのだ。助けたい勇樹だったが、触ることも、沙里以外には声を伝えることもできない。勇樹に気付いた沙里は彼に一つだけ、「見ないで」とお願いする。絶望感に苛まれながらも勇樹は従うことしかできない。
その出来事の後、勇樹は自分を成仏させないために沙里が不幸なのだと思い、沙里の元を去る決心をする。彼は自分に人を怖がらす不吉な「気」を出す力があることに気付き、さとるの元へ行って、さとるが沙里に関わろうとするときに悪い気を送ることで沙里と別れさせる。そして、沙里のせいで自分は成仏できなくて辛いと、あえてきつく沙里に伝え、彼女の元を去る。
寂しさと罪悪感でいっぱいの沙里だったが、そんな彼女に上司の遠藤満男が好意を寄せる。沙里は半分投げやりな気持ちで満男と付き合う。今でも勇樹の事を思う沙里だったが、満男にプロポーズされ、自分が幸せになれば勇樹も無事成仏できるのではと思い、戸惑いつつも承諾する。
しかし、沙里と満男の新婚生活が始まっても勇樹は成仏できずにいた。沙里の元を去ってから沙里に姿を見せなかった勇樹だったが、こっそり沙里の動向を確認していた。沙里が幸せそうなのを見て安心しつつも、自分が成仏できない事実に焦る勇樹。さらに偶然ばったり会ってしまった沙里に無視され、自分が沙里に見えていないことを知る。
成仏もできない、沙里にも見えない、孤独と絶望を感じた勇樹は、小さい頃からの沙里との思い出がつまったこの町を出ようと決心する。
そして、町中でまた偶然沙里を見つける。勇樹は最後に思いが溢れてきて、抑え込んでいた沙里への愛情を叫ぶが…。